コード解析

「レイトリー」「Lately」 ~ スティーヴィー・ワンダー Stevie Wonder

はじめに

しっとり始まって熱唱で終わるという、スティーヴィーの典型的なバラード。
彼の曲の中でもけっこう認知度の高いものだと思ってたのですが、日本語のwikiではこの曲のページは無く、英語のwikiでもあっさりとしか書かれてません。ま、いいんですけどね。

℗ 1980 Motown Records, a Division of UMG Recordings, Inc.

で、曲調からして熱い熱いラヴソングかと思いきや、実は「ちょいちょい香水をつけるようになったね」とか「こないだ寝てるとき、誰かよその奴の名前呼んでたよ」(筆者訳)のような歌詞の、オメオメとした嫉妬ソングなんですよね。広い意味ではラヴソングには違いないですが。

ってことで、コードを見ていくのですが、この曲のコード的な見どころはラスト一点です。
なのでほかの部分はあっさりと。ではいってみましょう♪

コードの話

イントロ

印象的なウッドベースの音色とスティーヴィーのピアノが優しく絡み合うイントロですが、コードについては、教本のいっちゃん最初のページに出てくるようなド定番の進行です。

強いて特徴を挙げると、ピアノとベースが3連符っぽくユニゾンしてるね、ってことと、ピアノのファ、ド、ラ♭っていうフレーズの「ド」がD♭コードの構成音に無くて耳に残るね、ってことですかね。

Aメロ

引き続きコードはオーソドックスです。
1番と2番、いっしょに書きます。

上の2段めのA♭9のところは普通で考えるとA♭7ですし、大抵の楽譜やサイトでそうなってるんですが、曲中何度か出てくるこの部分でB♭(9th)が鳴ってるのでこうしてます。
3段目の最初を(add9)にしたのは、後半の♪But when I ask will you~のくだりで9thが鳴ってる気がしたからこうしてます。

あと、3段めからのコード構成音が下がっていくところ(クリシェっていうんですかね)では、普通はベース音は変わらず進むのですが、ここではいったんB♭になります。
  E♭m→E♭mMaj7/ B♭ →E♭7→A♭7
スティーヴィーはクリシェをだいたいこのようにしますね。
ほとんどの楽譜やサイトで
 E♭m→E♭mMaj7→E♭7→A♭7
って表記されてますけど、E♭mMaj7のところ、ウッドベースB♭鳴ってるよね?ピアノでE♭m→E♭maj7→E♭7って弾いたら全然雰囲気違っちゃうよね?大事なとこだと思いますけどね。
あと同じく3段目、A♭9のところもちゃんとB♭(9th)鳴ってます。鍵盤図にするとわかりますが、クリシェの流れで下がっていく音以外は無駄に動いてないわけです。

Bメロ

M6とかm6とかはあまり馴染みがないかもですが、メロディに6thの音が入ってるってことでこうなる。
普通のⅣ→Ⅳmとニアリーです。
あと、♪Cause they~のところでコードを細かく刻んできます。「For Your Love」ほかでもよく見られる。
こういうのもシンコペーションっていうの?どなたか教えて下さいませ。

ブリッジ!

ここですよここ!
盛り上がり部っていうの?転調ブリッジとでも言おうかな。なんせキーがD♭なので記号がややこしく、ピンとこない方もいるかもってことで、あとでKey:Cでも書いておきますので。
いいですか、いきますよ、こうですね。

1回だけAM7が入りますが、ほかはとにかくm7のままぐんぐん上がっていく。こんなの見たことない。

音楽理論みたいなものを華麗に無視してる・・

無理やり理屈付けをすると、2段めのG♭m7から実はKey:Eに転調してて、
Ⅱm7→Ⅲm7→ⅣM7→Ⅴm7→Ⅵm7なのだ、とか、
いやいや、そのうえBm7のところからもさらに人知れずKey:G♭に転調してて、
Ⅳm7→Ⅴm7→Ⅴ♭9♭5→Ⅳ6→Ⅳm6ってなってるのだ、などの見方もあるんでしょう。
でも、我々に見えないものが見えてる人の感性で作った曲について、そういう左脳的な議論はきっとナンセンスなんでしょう。
とにかく、m7でゴリゴリ上げていったあげく、C9♭5みたいなよくわからないコードがぶっ込まれるんですけど、ここが反則レベルでカッコいい。こんな不協和音も、前後の流れでこんなにカッコよく響くんですね。


そして気がついたらに転調してる。転調って言ってもそんじょそこらの転調ではなく、Key:D♭からKey:G♭です。カラオケで言うところの「おーい、これ5つ上げて」ってやつです。
転調する手前の橋渡しがベラボーに上手いんですよね。
曲を初めて聴いて、しばらくしてコードを知ったんですけど、地味にド肝抜かれました。
ちなみにC♭ってBなのだが、楽譜上では始めのKey:D♭の表記のまま進んでるのでこう書いてありますね。
鍵盤図と、Key:Cでのコードも載っけておきます。

あ、忘れそうになりましたが、最後の最後、キメコードは素直にG♭ではなく、E♭M7(ⅥM7)で締めてる点は書いておきましょうね。しっくり来ます。これもセンスやね。

おわりに

別のエントリでスティーヴィーのライヴDVDを紹介させていただいてるんですけど、この中の「Lately」演奏後の拍手喝采が凄いのなんの、って話を書かせていただいてます。この曲が好きだという方には是非とも観ていただきたい。素晴らしい演奏がオーディエンスのハートにぶっ刺さって喝采が生まれ、その喝采をスティーヴィーもがっちり受け止めてる状況が、かなり感動出来ます。

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