コード解析

「イッツ・ユー」「It’s You」 ~ スティーヴィー・ワンダー Stevie Wonder

はじめに

洋楽を聴き始めたのは中2くらいだったかな、と思って調べてみると、まさに中2だった1983年、カルチャー・クラブ『Colour By Numbers』やデュラン・デュラン『Seven And The Ragged Tiger』がリリースされてました。この辺から洋楽に入ったんですわ、私。

で、その後しばらくしてやたら街なかでかかっている曲があって、誰なんだ?と思いつつレコード屋さんを覗くと、この『The Woman In Red』が絶賛売り出し中で、そのやたらかかってた曲ってのは、そうです、「I Just Called To Say I Love You」だったわけです。この「It’s You」も一緒によくかかってた。なになに?こんないい曲ばっかり書く人誰?ってなって、そこからずっとファンやらせてもらってる感じです。当時の強烈な印象は、今なおよく憶えてるし懐かしい。

℗ 1984 Motown Records, a Division of UMG Recordings, Inc.

ジャンル分けはあまり好きではないですが、AORというジャンルはご存じでしょうか?今は死語なのかな?誰が名付けたかAdult Oriented Rockのことで、平たく言うとちょっとお洒落で洗練された大人のロック、というところでしょうか。

ちょっとお洒落で洗練された大人のロックて・・

アーティストで言うとボビー・コールドウェル、クリストファー・クロス、シカゴあたり。スティーヴィーの曲の中ではAORっぽいな、っていうのがこの曲です。
そんなAORの匂いは、全編に渡って奏でられるピアノを中心としたエレガントなアレンジと、デュオンヌ・ワーウィックとの上質なヴォーカルワークによるものなのかなと思います。
「あんたや、あんたこそが天国から贈られてきた天使なんやぁ!(筆者訳)」と歌い上げるベッタベタのラヴソングですが、コードはなかなか凄いよ。いってみましょう♪

コードの話

イントロ

すいません、解説の前に1点。
黒鍵を多用するキーを使うことが圧倒的に多いスティーヴィーですが(おそらく目が見えなくても弾きやすいから)、この曲は非常に珍しくkey:Cで始まります。(他では「Stay Gold」がKey:Gですかね。)

どっしり安定感のある美しいイントロですが、コードは類を見ないレベルで複雑です。
こんな感じ。

戦意を喪失したそこのあなた、ご安心を。右手だけ追うと、
Em7→Am7→Em7→Dm7→C#m7
みたいなことになり、m7コードを弾き続ければいいんです。鍵盤ではこうなります。


他のエントリでも随所で書いてますが、コードネームは少々ややこしくても、指使いはスムーズに流れてたりするわけです。上記のように弾いていくとこんな感じになります。

実はこのイントロのコード、あとでヴォーカルのブリッジとして登場することになります。
イントロを先に思いついて、あとでブリッジに活用したのか、いやいや、メロディの続きでブリッジを思いついてからイントロに起用したのか、そこまで解説してるものは多分無いだろうからご本人のみぞ知る、なのでしょうね。

Aメロ

こうですね。

©1980 Jobete Music Co.,Inc.&Black Bull Music™(ASCAP)

この2つ目のBm7/E、さらっと使ってますが、key:Aもしくはせいぜいkey:Gの曲でしかお目にかからないコードで、Key:Cではまず見ないですね。たしかに、メロディ聴くとBm7かな、Em7かな、と思ったりする。フフ、実はBm7/Eなのよん、みたいな。Em7/Aもあんまり見ないけど、Am9とかG/Aとかの類ってことでスルーしておきます。

Bメロ

寸前のAsus4→AをⅢに見立ててDmに飛びます。ここからKey:Fに転調。

©1980 Jobete Music Co.,Inc.&Black Bull Music™(ASCAP)

よくあるⅥm→ⅥmM7→Ⅵm7を、ベースをいじってⅥm→ⅥmM7/Ⅲ→Ⅵm7とするのはスティーヴィーの定番。
最後にG7sus4→G7→A7sus4→A7、っていう意味不明の技を一発カマしてKeyDに転調します。

自由か!

Cメロ

©1980 Jobete Music Co.,Inc.&Black Bull Music™(ASCAP)

2つ目のコードですが、私の持ってる市販の楽譜ではBm9となってましたが、ヴォーカルにE(ミ)の音も出てくるし、F#m7/Bでもいいのかな、と思いました。この曲はこれ系の分数コードで成り立ってる気がするし。最後を強引にDm7→Dm7/G(Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ)にしてKeyCに転調、ブリッジへつなぎます。

自由自在か!

ブリッジ

冒頭に書いたように、ここでイントロのコード進行が出現します。

©1980 Jobete Music Co.,Inc.&Black Bull Music™(ASCAP)

最後、またしても強引にGm7→C7を挟むことでスムーズにDメロのFM9に入っていきます。

Dメロ

©1980 Jobete Music Co.,Inc.&Black Bull Music™(ASCAP)

ここのヴォーカルのハモり、なかなか難しそうですが、そこはデュオンヌ先輩、なんなくこなします。
ここのストリングスはシンプルだけど気持ちいい~。
最後Em7→Em7/AにしてわざわざKey:Dにしてハーモニカソロに突入。
このDメロでは、同じEm7でも違う使い方をしてます。高度なお遊びですねぇ。。

ハーモニカ ソロ

Key:CであるAメロの進行をなぞるハーモニカソロなのに、なにゆえKey:Dにしてから吹き始めるのか!?気にしてたらキリが無いので、気にせず突き進みます。
5小節目に入る寸前から鳴らす長音がインパクトありますよね。これはD(レ)の音なんですが、5小節目のGmaj9にはレが含まれるけど、その前のC#m7/F#にはレは無いから、一瞬の違和感がインパクトになります。短いソロですが、センスが光る。

ここからは上記いづれかの繰り返しになります。
美しく自然なメロディでありながら、高度な技の連発。いわゆる分数コードを自由自在に操って転調を繰り返し、楽しく遊んでる気すらしますが、大好きな1曲です。

おわりに

ところで皆さんはデュオンヌ・ワーウィックというヴォーカリストはご存じでしたか?ホイットニーヒューストンといとこ同士とか。ご存じなくても、「That’s What Friends Are For」という曲はお聴きになったことがあるのでは。かのバート・バカラック先生が作られた1985年のヒット曲です。(私知りませんでしたが、ウィキペディアによりますと、オリジナルは1982年のロッド・スチュワート版だそうです。。)

そのリードヴォーカルがデュオンヌ・ワーウィックで、共演者(Friends)としてスティーヴィー・ワンダー、グラディス・ナイト、エルトン・ジョンというバリバリのメンバーがともにヴォーカルを取っています。で、当然のようにグラミー賞で最優秀楽曲賞ほかをゲットしたのですが、その模様をリアルタイムでテレビで観ていた若かりし私、デュオンヌの声、というか声量にド肝を抜かれたのでした。彼女の歌い出し10秒だけでもいいので是非聴いてみてください。

鼻から口にかけての骨格が日本人とは根本的に違うのだろうな、と思わざるを得ん。。もちろんほかの2人の歌いっぷりも素晴らしいし、ピアノを弾くバカラックご本人も楽しそう。

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