コード解析

「エボニー・アンド・アイボリー」「Ebony and Ivory」 ~ ポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダー Paul McCartney & Stevie Wonder

はじめに

1982年に、ポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダーという最強タッグで発売された曲。そういや、ポールがマイケル・ジャクソンと組んだ「セイ・セイ・セイ」ってのもあったなぁ、って思って調べてみると「セイ・セイ・セイ」のリリースは翌年の1983年でした。
ビートルズがこれでもかっ、てくらいヒットを飛ばして解散したのが1971年、そこから10年弱でジョンが銃弾に倒れ、それでも前を向いて上記2曲のヒットを飛ばした1983年の時点で、ポールはまだ40そこそこ。いろいろあったけどまだまだ若く、ヒット曲バンバン書ける時期だったのよね。そんで、スティーヴィーはポールの8つ下だから30ちょっと。

℗ 2015 MPL Communications Inc/Ltd, under exclusive license to Universal Music Enterprises, a Division of UMG Recordings, Inc.

で、この曲はというと、タイトル通りストレートに「ピアノの黒鍵(Ebony=黒檀)と白鍵(Ivory=象牙)はお隣どうし仲良く並んで、日々一緒に素晴らしいハーモニーを奏でてるじゃないか、ウチらにだって出来るっしょ!」(筆者訳)と楽しく高らかに歌い上げます。人種差別の問題を後ろ向きに批判する姿勢は見られず、あくまで前を向いたメッセージを音楽に乗せて発信しています。そしてこのクオリティ。これぞミュージシャン。これぞアーティスト。

ノーベル平和賞モンじゃないでしょうか、、、

収録アルバムであるポールの「Tug Of War」のクレジットを見ると、スティーヴィーがドラム叩いてる。
まぁええけど。
ってことで、ポールの魅力満載のコード、見ていきましょう♪

コードの話

人を喰ったようなイントロ・・

ノーベル平和賞を!とか言っておいてこういう言い方もアレですけど。
ふぁーっと希望が広がっていくような印象的なイントロですが、コードこうなってます。

ややこしいでしょうか。Key:Cに直して、鍵盤図もつけてみます。

ルートはG(ソ)を弾きっぱなしで、白鍵でひとつ飛ばしの3本指和音をAmから始めて上下させてるだけ笑!

ピアノをテキトーにいじって出来たんでしょ、ポール卿さんよ!

オリジナルキーではこうですね。近所に鍵盤がある人は弾いてみましょう♪

Aメロ

美しい・・。
はじめのワンフレーズだけでノックダウンされてしまいます。まさにポールのメロディ。「♪ivory~」の「リー」のところはポール得意のシンコペーションです。オリジナルではベースはシンコペーションしてないのですが、このエントリの最後に紹介するホワイトハウスでの演奏では「リー」のところでベース鳴ってます。冒頭に書いたマイケルとの「セイ・セイ・セイ」でも、歌い出し「♪Say,say,say what you want~」の「ウォーン」のところでもシンコペーションが見られます。コードが小節に縛られずに展開していく、ポールの得意技。

Bメロ(BメロとCメロ?)

Cメロっぽい部分が短いので一気に行きましょう。こうかな。

「♪We all know~」から「♪ever you go」まででBメロと捉えることが出来ますが、その間なんと5小節です。こういった、小節数が半端なことなど気にせず自由に、そして違和感なくメロディを乗っける、というのもポール作品の特色です。ご本人はあまり意識せずに、ただ気持ちいいように作ってるだけだと思いますが。
そして、「♪ever you go」の「ゴー」のところ、またしてもシンコペーションキメてます。
そして次のD6のところからCメロってことなのかなと思いますが、唐突にこんなコードぶっ込んで転調するあたり、スティーヴィーが手伝ったのかなと勝手に思っています。
この「♪We learn to live~」のとこ、コードネーム難しいでしょうか?指はこうですね。中の2音を半音ずつ下げますよ、と。

最後、F#m7→F#m/BってやってKey:Eに戻ります。
ちなみに、2コーラス目のBメロでのポールのハモりが楽しそう♪

ブリッジ

Aメロの最後にC#sus4→C#を持ってきて、Key:F#に転調し、ブリッジに入ります。
最後に、半ば強引にF#m7/BにしてKey:Eに戻す、と。

若い頃、最初にこの曲を聴いたとき、一番印象的だったのがこのブリッジのところ。
様々な人種の人々が手をつないで、リズムに乗って微笑み合っているような、なんとも平和な感じのするパートじゃないですか?シンセの音、いかにもスティーヴィーが好きそうな音色。
add4なんていうややこしいコードを振ってますが、短3度(って言うんですかね)のシも鳴ってるし、4度のド#も鳴ってるのでこうなっちゃうのかなと。(add11)って書くのが正解なんかな?
こう押さえてみたのですがいかがでしょ。

ヴォーカル エンディング

ここどっちでもいいとは思うんですけど、市販の楽譜によっては少し複雑に書いてるのもありまして、一応書いておこうかなと。(下の赤の部分)

もういっぺんブリッジ

さらに最後にもさっきと同様のブリッジが出てきますが、さっきはKey:F#でしたが、ここはKey:Eのままなんですよね。巨匠たちのお遊びでしょうか。さっきのブリッジからキー下げただけですが書いておきます。

おわりに

曲のリリース当初、ビデオクリップの制作では二人のスケジュールが合わず、ビデオ内の共演は合成だそうです。たしかにスティーヴィーと背景の境目がガビガビ笑・・。黒基調、白基調の衣装なんですが、途中でおのおのジャケットを脱いで色味が逆になる演出がされてますね。
と、オフィシャルなビデオクリップ制作でさえスケジュールが合わなかった二人ですが、2010年、ホワイトハウスにてポールがオバマ大統領よりガーシュウィン・アワードを受賞した際のライブでは、老齢の2人が堂々たる共演でこの「Ebony And Ivory」を熱唱する模様を観ることが出来ます。このDVDは、他の演奏も見ごたえ十分でおすすめ。

“BLACK LIVES MATTER!!“運動が記憶に新しいところですが、こんなに世界が繋がった時代でも人種差別問題は根深い。解決するのに時間がかかる問題なんだろうと思います。20世紀の偉人2人が歌ったこんな素晴らしい曲を聴いて、口ずさんで、伝えて、残していくのも重要なことなんだろうなと思います。
“♪Ebony, ivory, Living in perfect harmony~”

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